dcsvの企業研究

思うところあって、企業研究をしようと考えています。企業理念やビジョン、トップメッセージ等を見ていきます。

三菱UFJフィナンシャル・グループ 経営ビジョン

時価総額ランキングを上から見て行って、2017年2月現在で 日本で2位のMUFGが目に留まりましたので、一回目はこのMUFGから見ていきたいと思います。

  金融機関は経営者が何を考えているのか、個人的にはわかりにくいと思っていますので、とっかかりとして選びました。

 

経営ビジョン・CIなど|三菱UFJフィナンシャル・グループ

 

経営ビジョン

経営ビジョンとして、最初に使命が記載されています。

私たちの使命

いかなる時代にあっても決して揺らぐことなく、常に世界から信頼される存在であること。
時代の潮流をとらえ、真摯にお客さまと向き合い、その期待を超えるクオリティで応え続けること。
長期的な視点で、お客さまと末永い関係を築き、共に持続的な成長を実現すること。
そして、日本と世界の健全な発展を支える責任を胸に、社会の確かな礎となること。
それが、私たちの使命です。

「常に世界から信頼される存在であること」 というのが最初に記載されています。大辞林によると信頼とは「ある人や物を高く評価して、すべて任せられるという気持ちをいだくこと。」とあります。ということは、世界から評価されること、また任せてもらえる存在になりたいということと考えられます。

第一に世界をスコープととらえているということをもってきているのが印象的です。

そうした思いからすると、世界的な大きくてつぶせない銀行の一覧に載り より厳しい規制を受けるのも銀行の思いとしては、やって当然のことととらえられるのかもしれません。

List of systemically important banks - Wikipedia

 

次に「顧客の期待を超えるクオリティで応え続けること」とあります。顧客の期待を確認することも大切な気がしますが、他よりがんばりますよということなのかもしれません。

 

3つ目に 長期的に、末永い関係、持続的な成長を顧客とともに成し遂げるとあります。短期目線ではありませんよということなのでしょう。共存共栄ですね。

 

最後に 日本と世界を支える、またそれが自分たちの責任で、社会の確かな礎となるとあります。 ここも壮大なことを考えているように見えます。

 

大くくりでまとめると、ゴールは 以下の2つくらいと考えれるかと思います。

1.世界に出ていき、世界規模で社会に貢献していく存在になる。

2.顧客と長期目線で、共存共栄していく。

 

 

中長期の目標

それを受けて、中長期では以下のような姿を目指すとあります。

中長期的にめざす姿

世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ
-Be the world’s most trusted financial group-
  • お客さまの期待を超えるクオリティを、グループ全員の力で

    お客さま視点を常に大切にし、グローバルに変化する多様なニーズを逸早くとらえ、グループ全員の力で応えていく。社員一人ひとり・一社一社が専門性を極め、グループ一体となって連携・協働し、世界水準のトップクオリティを追求する。

  • お客さま・社会を支え続ける、揺るぎない存在に

    変化の激しい時代においても、お客さまの資産を守り、日本社会と世界経済の健全な成長を支える。一人ひとりが築く信頼と、グループ全員で作る強固な経営基盤で、最も信頼される頑健な存在であり続ける。

  • 世界に選ばれる、アジアを代表する金融グループへ

    これまで培ってきた強みを活かし、日本はもとより、アジア、そして世界においても選ばれる存在となる。多様化・ボーダレス化する社会で、変化へ積極的に対応し、一人ひとりが成長・活躍できる組織として進化を続ける。

 ゴールを目指す手段の部分ですね。

「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ」とあります。よくよくみると 英語では「Be the world’s most trusted financial group」とあり、もう一段高いところを目指しているように見えます。世界でもっとも信頼される金融グループになるということですね。One of the world's most trusted..ではなく、The world's most trusted..とあるのが印象的です。

これを見ると、まずは世界に打って出たいという気持ちが強そうです。

 

そのあと、さらに3ステップに分けて考えているようです。

1ステップ目は、グループの力を強調しています。そして2ステップ目では、経営基盤をしっかりして信頼を得たい、また3ステップ目では、アジアを代表する金融グループへとなりたいと見えます。

 

つまり、世界に出たいけど まずは手始めとしてアジアで頑張りますよというように見えます。ただ、経営基盤を揺るがすようなことはしたくなく、グループ全員の力を結集して戦いたいということでしょうか。

 

その一環で2013年末にタイで五番目の資産規模のアユタヤ銀行を連結子会社化したのだと考えられます。ただ、そのあと3年ほど経過して 次の海外の大型買収案件はなく、成長国とはいえ、現状では政治の安定が危ういタイに進出したところで止まっているように見えます。

経営基盤を揺るがしたくないということから機会をうかがっているのかもしれないですが、買収だけが世界に打って出ることではないとはいえ、外から見ると目指している姿にあまり近づけていないように見えます。

世界的な金融危機が次に起こったら、その時は打って出るつもりなのかもしれません。そういう意味では、何かあれば世界を支える気持ちがあるけど、直近は様子見ということでしょうか。

下準備として、人事制度やシステム面で アユタヤ銀行をファーストケースとして、どのように統合するか、現地との役割分担をするかを整理しておくということは始めているかもしれません。

 

信託銀行は100%子会社ですが、証券会社は三菱UFJモルガン・スタンレー証券が60%、モルガン・スタンレーMUFG証券が40%の出資比率と なんとも微妙な状態で、グループ全員の力を結集するというには シガラミが多そうです。

方向性としては、ホールセールではベンチャーや中小企業向けでは資金需要の大きい時期にいかにリスクを取って資金を提供できるか、また大企業では様々な資金調達手段から金融市場の動向を考慮して最適と考えられる手段を提案することがポイントで、リテールでは高齢世代の資産運用ニーズをどのように取り込んでいくのかが直近のポイントだと考えられますが、パッと見で それぞれの会社で個別に取り組んでいるように見え、そのあたりが課題かと思います。

それぞれの業法もあるとは思いますが、また それぞれ 元々 それなりの歴史をもった会社であるので、そう簡単に年金等の事務、資産承継やラップ口座は信託銀行、M&Aや証券発行、投信やNISA関連は証券会社といったような役割分担ができるわけではないと思いますが、 どう力を結集するかがポイントですね。

それぞれの会社の強みを活かして、それぞれの企業の成長段階やライフステージに合わせて、必要なサービスを提供して 末永く共存共栄関係を目指すというのがビジョンにつながっていくと考えられますが、道のりは長そうです。

 

 

今後の展開の妄想

ビジョンは長期視点でのゴールのため、現時点では遠い目標であって当然です。ビジョンを定めたからには、そこに向かってどう道筋をつけて近づいていけるかが経営の腕の見せ所だと考えています。

 

妄想ですが、そうした状況下であれば 金融グループとして より機動的にサービス展開をできるようにワンストップ化を考えて、証券会社の微妙な資本関係はすっきりさせたいと考えるかもしれません。

あとは保険関係が弱いようにも見えますが、保険会社は系列が入り組んでしまって どうにかできる状態ではなく、また低金利下で資産形成の手段という面は薄れつつあるように思えますので、現状維持かもしれません。

そうした中で もし、世界的な金融危機が起こって 特に海外の銀行等で割安と考えられるものが出てきたら、経営基盤を揺るがさない範囲で買収等を検討するといったところが今後の展開として考えられそうです。